皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇

【皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇】
(2013/アメリカ+メキシコ/NARCO CULTURA)


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メキシコの麻薬戦争を追ったドキュメンタリです。
イメージフォーラムってこんなにドキュメンタリに強い劇場だっけ?
ここ最近ドキュメンタリを上映するのが多い気がする。
ミニシアターとしての独自の路線を貫いているところがいいよな。

@渋谷イメージフォーラム



「世界で最も危険な街」メキシコのシウダーフアレス。
年間3千件の殺人が起きる。
地元警官リチは事件現場で証拠を集める。リチたちは現場では覆面をかぶって捜査する。報復を恐れて。
それでもこの一年で、同僚が四人殺された。
リチのママは「仕事をやめて」と言うが、リチは「地元の為に働きたい」
撮影の間にも捜査のトップが、「今日辞職しなければ殺す」と脅迫され辞任した。


ドキュメンタリならではの、事件現場の凄惨さ。
居合わせた被害者の妻の手が震えている。
血だまりをそうじする近所の人。運ばれる遺体。
どれもこれも本物・・・。

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ところがところが、ここでは事件の内実際に捜査されるのは3%で、残りの97%は捜査もされず放置されたまま。
リチたちは現場から遺体を回収し、銃弾などの証拠品を集めるだけ。
何の意味があるのか?と思う。
それでも誰かがやらなければいけないことなのだ。

と、地元警官にフォーカスした点はよくあるパターン。
もう一人の男をカメラは追う。

メキシコ系アメリカ人エドガーは、国境の向こうアメリカに住む。
麻薬ギャングをネタにした音楽ジャンル「ナルコ・コリード」の歌手。アメリカやメキシコで人気がある。

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バズーカやライフルを担いでライブすると、熱狂したファンで大盛り上がり。
見ていて理解不能。なぜこんな物騒な歌がいいのだろう??

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これが原題:「NARCO CULTURA」につながる。
麻薬組織がひとつの「カルチャー」になってしまった。

麻薬戦争以来フアレスでは産業がすたれて人々には職がない。貧しい。
少年たちにとって「ナルコ」(麻薬の売人・組織)は憧れ。
金と権力を持ち、人を殺しても罪に問われない。
若い女のコたちも、ナルコとつき合いたいと言う。
それが一番恐ろしいことだよなあ。

エドガーは清潔で安全なアメリカにいながら血なまぐさい歌を作る。
ナルコがネットでアップしているサイトを日々チェック。事件のニュースや映像を見てネタにするが、「現場」を知らないことがコンプレックス。
しばらく現地に行ってそこの空気を肌で感じ歌のネタを仕込みたいと言い、大物ナルコの招きで現地入りするのだが。

真剣にナルコと向き合うリチと、ノー天気にナルコで稼ぐエドガー、対照的な二人を描くところがおもしろい。

最後にメキシコ最大の麻薬マフィア、シナロア・カルテルの本拠地クリアカンの納骨堂が映る。
大物ナルコとなると納骨堂とはいえ、人が住めるようなリッパなもの。
人々が暮らす貧しい家より死者が葬られる墓の方がはるかに立派でゴージャス。
そしてこれらは確実にどんどん建てられて行く。その内街は納骨堂に侵食されていくんじゃないの?

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メキシコのナルコの金は国家予算規模。
政府は全面対決を打ち出してるけど、金持ってる方が強いよねえ。
警察が買収されてるなら、政府関係者も同様だよね、きっと。
この金の大半はアメリカから入って来るもの。
全く先が見えない麻薬戦争の闇を見たのだった。

監督&撮影は、シャウル・シュワルツ。イスラエル生まれ。
報道写真家としてピュリツアー賞も受賞している。

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エドガー(左)とシュワルツ監督


===
「クリスタル」を製造する元化学教師ウォルターのドラマ「ブレイキングバッド」を見ていてナルコに興味を持った。
このドキュメンタリでは、殺人事件がフアレスでは3千件、国境の向こう、テキサス州エルパソでは4件って言っていたけど、「ブレイキングバッド」を見ている限り、エルパソはかなりヤバいとこだけど・・・。4件なんて絶対ウソウソ!

最近読んだメキシコを舞台にした麻薬組織の小説、舞台はオルティナ。シウダーフアレスより物騒な街と言っていたけれど、架空の街なのだろうか。
いやいや、フアレスより物騒だったら誰も生きていられまいよ。

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美少年の恋 その1PageTopチレラマ CHILLERAMA

Comment

聞くと見るとは大違い。二階建て、三階建ての納骨堂が乱立する写真に圧倒されました。この映像はもっといろいろなところで公開されてもいいんじゃないかな。

■アラスカさん

タイムリーなことに今週朝日新聞GLOBE版にシュワルツ監督のコラムが掲載されました。
監督がメキシコに行くきっかけは、NYでメキシコ人女性と恋に落ちたから、というのが笑えた。
それが15年前で、とても良いところだったのに、2007年ごろから変わってしまったらしい。
メキシコの前大統領は「世界で最も富裕な麻薬愛好国(米国)の隣りにいるのは大変なことだ」
大量の武器はアメリカからメキシコに流れて来ているし、この戦争はアメリカから持ち込まれたようなもの。
やっぱりアメリカは病んでいるよね。
この映画はメキシコでも上映され、監督は現地に行きたかったが「来ない方がいい」と言われたそうです。
メキシコでの反応を知りたいところです。
おっしゃる通りもっと見てもらいたい映画ですが、ドキュメンタリってマイナージャンルだよね。
なかなか一般の人が見てくれないのが残念です。

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追記・その他

  (2017/07/15) 「FATHERS」に追記あり。 プーン役のAsda Panichkulは元MTVアジアの人気VJで東南アジアでは有名人。 ユク役のNat Sakdatornはタイのタレント発掘番組で優勝した実力派シンガーソングライター。

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