小説 平成猿蟹合戦図

【平成猿蟹合戦図】 吉田修一

平成猿蟹合戦図 (朝日文庫)
吉田修一
朝日新聞出版
2014-03-07



吉田修一先生の長編小説。
深刻にならずに読める現代の御伽草子。

歌舞伎町のバーテンダー浜本純平は、ある日ひき逃げ事件を目撃する。
だが逮捕されたのは全くの別人だった。
真犯人への恐喝を目論む内に、世界的なチェロ奏者のマネージャー園夕子と知り合った純平はいつの間にか地元東北から国政選挙に出馬することになり・・・。


おもしろかった!
あらすじを読むと、なにやらダークでミステリじみた話かと思っちゃうけど、これは深刻にならず軽いノリで読んでつかあさい、という話。
そして読み終わると、スカッとする。
三部構成になってます。

第一幕でゆすりを企むバーテンダーとホスト。ろくでもないヤツと思うわよね。
一方世界的チェリストは実兄を身代りにして罪を逃れる。
これまたろくでもないヤツ!
ところが話が進む内、いささか違う方向に転がって行く。
これも吉田修一のギミック?

何も考えてないようなチャラいノー天気な純平だが、不思議な人間的魅力がある。
そこに目を付けた園夕子の周到な計画によって浜本純平の選挙戦が展開する第三幕。

歌舞伎町のバーテンダーが国会議員に?!
なんじゃあそりゃあ?!って話だけど、読んで行くと「ありだな」と納得してしまう。

地元で8期務めた大物政治家徳田重光を相手に、闘いの行方は・・・。

うまいなあと思うのは、心の声を各自の方言でつぶやくところ。
純平は秋田弁、美姫ママの関西弁、美月の長崎弁・・・。
方言だと実に本音っぽく聞こえる。

吉田修一先生がこの作品に込めた思いは、「人ってつながるんだな」ということだそうで、たしかにそういう話。

吉田修一の作品はどれも読み終わった後に一筋の希望の光がほの見える。
(その一筋が太いか細いかは作品に依るけろ)
そして、例によって多くの登場人物。
「貧乏くじばかり引いて来たような人生」の人間が必ず登場する気がする吉田修一作品。
そんな人も明日を信じられるような、そんな光。


園夕子の言葉:
――私思うんです。人を騙す人間にも、その人間なりの理屈があるんだろうって。
だから平気で人を騙せるんだろうって。
結局、人を騙せる人間は自分のことを正しいと思える人なんです。
逆に騙される方は、自分が本当に正しいのかといつも疑うことが出来る人間なんです。
本来ならそっちの方が人として正しいと思うんです。(中略)でも今の世の中は正しいと言い張る者だけが正しいと勘違いしているんです。


美姫ママの言葉:
――・・・なんかさ、あんな純平みたいな男が本当に国会議員なんかになったら、なんだかスカッとしない?
別に誰かに苛め抜かれて生きてきたわけでもなけりゃ、誰かに仕返ししたいと思ってるわけでもないけどさ、誰だってちっちゃな嫌なことならいくらでもあって、それをちっちゃいことだからって我慢して生きてるわけじゃない?
もちろん純平が国会議員になったからって、何が変わるわけでもないけどさ、なんかそういったちっちゃな辛抱みたいなものがさ、スカッと吹っ飛ぶような気がするのよね。



いかにも吉田修一らしい表現だなと思うくだり:
(五島列島から赤んぼを抱いて、連絡の取れなくなった夫・朋生(ホスト)を探しに歌舞伎町に来た美月)
――父親や「ジュエル」のママは甲斐性のない男だと決めつけるが、朋生が何よりもまず美月と瑛太のことを考えてくれることは知っている。
何を根拠に?と言われても困るのだが、朋生という男はとても分かりにくい人間で、一万円あれば自分で勝手に使ってしまうが、もし十万円あれば、間違いなく全て美月にくれるような男なのだとしか説明できない。


吉田修一先生、分かりにくいです(笑) でもそんな先生が大スキです☆

帯に、「底抜けに明るい復讐劇」とある。
それがつまりタイトルになっているわけだけど、えっ?誰が猿で、誰が蟹ってことなの???と思いながら読み進むと最後にわかる。ううむ・・・そうか。

===
この作品も映像化されています。
wowowドラマ(全6回)。監督は行定勲(吉田修一作品「パレード」)。
純平は、高良健吾(吉田修一作品「横道世之介」)。
2014年に放送された。DVDリリースは今年9月予定。見たい!

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Comment

デジャブ

読み始め、出て来る登場人物知ってる気がするのよ
だけどストーリーと場面が思い出せないんだわ
わいは読んだ覚えがないぞ ドラマも見てないぞ
デジャブ… やべぇ、ミステリーだ
半分読み進めた所で一気に視界が開けたわよ
しかし、いつ読んだのかは分からないのよね
大勢の登場人物も苦にならず、さらっと面白く読み終えたんだわ
わいの側に、夕子さんか美姫ママが居たら波乱万丈若しくは終始ご安泰の(バラ色)人生送れたかもなぁ
前半ややミステリーからの夢物語みたいなお伽話チックな展開に、わいびっくらこいたけど上手いなって感心しちまったのよね
これって映像向き?なんてね


■けんちゃん


> デジャブ… やべぇ、ミステリーだ
謎ですね

> 前半ややミステリーからの夢物語みたいなお伽話チックな展開に、わいびっくらこいたけど上手いなって感心しちまったのよね
吉田修一先生の持ち味が出てる作品ですね

> これって映像向き?なんてね
吉田修一先生の作品はどれも、読みながら映像が浮かんでくるのです。

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