ルック・オブ・サイレンス

「ルック・オブ・サイレンス」
(2014/デンマーク,インドネシア,ノルウェー,フィンランド,イギリス/THE LOOK OF SILENCE)





問題作 【アクト・オブ・キリング】(2001) のアンサーソングのような作品。
前作は加害者を映したものだったけろ、今回は被害者側の視点から描いた。
監督は、ジョシュ・オッペンハイマー。
第71回(2014年)ヴェネチア国際映画祭5部門受賞。


今回の主人公はアディ。1965年の虐殺で兄ラムリが殺されその数年後に生まれた。
母は兄の生まれ変わりと信じている。
2003年、アディはオッペンハイマーが撮影した加害者たちのインタビュー映像を目にし、彼らが兄を殺した様子を誇らしげに語る様に強い衝撃を受ける。
アディは2012年、オッペンハイマーと再会。眼鏡技師として視力検査を行いながら、かつての加害者たちの元を訪れることにした――

「あなたはなぜ兄を殺したのですか――」
 100万人の命を奪ったのは、”責任なき悪”のメカニズム


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1960年代、インドネシア国内に「グッドイヤー」などアメリカ企業の工場が出来た。そこに大量の雇用が生まれたが、企業側にとって”めんどくさい輩”はみな「共産主義者」なのだった。
彼らの利益はインドネシア国家の利益。
かくして国の体制に抗う者、その他諸々は「共産主義者」。国家の為という大義名分の下、虐殺は行われた。

前作でも同様のことを思ったが、この出来事の異常性は、加害者が何の罪の意識もなく、今も村の権力者としてのうのうと生きていること。

親戚、ご近所として加害者は周りにいる為、アディの母はラムリの死を大っぴらに悲しむことが出来ない。悲しみは内に溜め込まれ、いつまでたってもその死を受け入れることが出来ずにいる。
その両親の為になればと、アディはこの撮影を受けたわけ。

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映画は三つのシーンから成る。
1・アディのこどもたちや両親の様子。ボケた父とのやりとりはくすっと笑える。
2・2003年に監督が撮影した加害者のインタビュー及びそのビデオを観るアディ
3・アディと加害者のやりとり

2003年のインタビュービデオは見るに堪えない。
前作【アクト・オブ・キリング】と同様、加害者たちは殺害場面を嬉々として実演、再現する。
しかもその殺害方法が残酷極まりない。
兄を殺害した時の話は特に酷く、アディはどんな思いでこのビデオを見たのだろうか。

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加害者たちがいい気になってしゃべっているのは、おそらく西洋から来た監督に気を許し、監督も彼らをうまく乗せたんだろう。
そしてそのビデオをアディに見せ、その場面をカメラに収めるというところにあざとさを感じなくもない。
この辺りがオッペンハイマーの”やり口”なのね。

ラムリ殺害の加害者が、自分の”武勇伝”を本にして出版していたのにはオドロキ!

↓ラムリ殺害シーンのページを自慢げに見せる男
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アディの言葉:
――誰も悪いことをしたと思っていない
後悔もしていない


そしてアディは加害者の家族に話を聞きに行く。
年老いた妻やこどもたちは一様に言う。
「何も知らない」

――何でこんなことをしている?
せっかく近所でうまくやっていたのに、なぜ傷口を開くようなことをする?


加害者であった父の世話をする娘(といっても今はおばはん)が唯一虐殺の事実を知りショックを受けていた。
聡明そうな目のこの娘さんは、アディに詫びる言葉を口にした。
中にはこういう人もいるんだと少し救われた気がしました。

最後にアディは叔父(母の弟)の元に向かう。
叔父は”共産主義者”の収容施設の看守をしていた。
叔父でさえラムリ殺しを手伝ったのだ。
アディに責められうろたえるおじさん。
アディはは家に帰り、事実を母に告げる。
何も知らなかった母はショックを受ける。

――共産主義者は、神を敬わない悪いヤツだから、
その家族もこどもも公務員になれない。
おまえたちは警官になれないんだ。


アディの小学生の息子は学校でそう教えられる。
虐殺から50年経って尚、負の連鎖が続いていることに暗たんたる気持ちになった。
これはどう考えてもおかしいよ。この国は一体どうなってる?

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  (2015/8/24) 「怒り」に追記あり。

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