生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った

「生きるための選択
―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った」
パク・ヨンミ (訳 満園真木)




少し前、著者が来日した時TVでちらっと見た。
まあ、かわいらしいお嬢さん。
彼女の壮絶な人生の本。



パク・ヨンミは1993年北朝鮮で生まれた。
父は商才があり、”北朝鮮では”恵まれた生活を送っていた。
しかし、ヨンミが9歳の時、父が逮捕され生活が一変する――

私は北朝鮮の人々について何も知らなかったんだ。
この本を読むまで。

ヨンミの語るかの国の生活は驚きの連続!
想像を超える世界。

一番ショックだったのは、死体が”その辺”にあるってこと。
川とか、道端とか。
餓死なのか、病気なのか?
こども心に、見てもスルーするというのが身につく。

13歳の時ヨンミが激しい腹痛を訴える。
おそらく虫垂炎だろうと病院へ。
ところが、大きい病院でも医者に賄賂を渡さないと手術してもらえない。
薬や包帯は家族が市場で調達して来るというのもオドロキ!
つまり、お金がない者は死ぬしかないってことだよね。

本来、医療や教育は無料と国で謳っていたはずも、実際は医者も教師も給料が出ない。(学校の先生にも賄賂を渡さないといけない)
病院の中庭には、死体が放置してある。
「7体にならないと引き取りに来てもらえない。まだ5体だから置いておくしかない」

そして、ヨンミの虫垂炎は、開腹してみたらただの胃腸炎だった・・・。

あら、これっていつの話だっけ?
2006年だよね。
ことほどさようにこの本って、読みながら、いつの時代だよ?!と戸惑うことしばしば。


ひもじさと絶望に堪えかね、母とヨンミは脱北を決意。
ブローカーの手引きのまま川を渡る。
(ちなみにこの時ヨンミは手術後間もない時で、まだ回復していない・・・イタ)


あれ?ヨンミたちはお金なんか持ってないはず。
ブローカーも金を要求して来ないよね。
???

疑問は中国側に渡ってわかる。

脱北女性は中国で人身売買されるのだった。
中国の農村部、特に身体・知的障害のある男性に嫁の来手がない。
ただ「嫁」として迎えられるのではない。
一家の「奴隷」となってこき使われるという恐ろしさ。

そして中国人ブローカーは売る前に脱北女性をレイプする。
逆らえば通報され送還されてしまう。従うしかない。

こうして母は農村に、ヨンミは13歳で中国人ブローカーの元締めの愛人となる。
すぐ中国語を覚えたヨンミはブローカーの仕事を手伝わされる。
13歳にして他の脱北女性の差配をすることになるのにもオドロキ!

中国での強制送還の恐怖に怯え2年。
(この間にも、元締めが落ちぶれてまたもひもじい思いをしたり、別のボスに拉致監禁、愛人にされそうになったりする)
ヨンミは韓国へ亡命する道があると知る。
青島まで行き、そこからモンゴルへ入るルート。

零下30度のゴビ砂漠を、星を頼りに歩き続けて4日、モンゴル国境にたどり着く。
モンゴルには韓国大使館の人が待っていた。


生まれてはじめて 自由が手に入った!


しかし、ここからさらに苦難の道は続く。
映画「ルーム」と同様、自由になってからがまた大変なのだった。

韓国の脱北者の受け入れ態勢なども興味深かった。
韓国では脱北者一人一人に5年間刑事が付くというのもオドロキ!

ヨンミの、「自己紹介が苦手」というエピソードがせつない。

――趣味とか言えばいいのよ

「趣味」って何? 北朝鮮には趣味というものはなかった。

――それならあなたの好きな色を言えば?


ヨンミは自分の好きな色など考えたことがない。

――あなたはどう思う?

と言われるのが一番困った。
自分の考えなど持ってはいけなかったから。

貧しくて学校に行けなかったヨンミは、15歳で7歳の学力しかなかった。
そこから猛勉強し、中学卒業資格、高校卒業資格を取り、更に韓国の名門大学に入学する。

苦手な英語もマスターした。
そんなヨンミに、北朝鮮の状況や自分自身のことを話してもらえないかと依頼が来る。
2014年ダブリンで開かれた国際会議でのスピーチが注目され、時の人となる。

北朝鮮での人権問題を訴える彼女に、北朝鮮側から脅迫がある。
それでも彼女は屈しない。

なぜ彼女はこんなに強くなれるんだろう?
彼女は、”選ばれし者”なのだろうか?


今彼女は世界中を飛び回り、人権活動家として活躍している。23歳。

最後に、彼女を愛人にした中国人ブローカーと電話で話すくだりが泣けた。
憎い相手だけれど、ヨンミには憎しみだけではない複雑な思いがある。
このブローカー、ホンウェイはヨンミの母を農村から買戻し、父を脱北させ中国に呼び寄せ埋葬もしてくれたんだよね。
彼なりにヨンミを愛していたんだと思う。

「壮絶」 というひとことで語るのは申し訳ないと思いながらも、他の言葉が思いつかないのだった。

尚、原文は英語で書かれている。
翻訳も素晴らしく、読みやすかった。

恋の罪PageTopトラック野郎 一番星北へ帰る

Comment

Commentの投稿

 管理人だけに表示する

TrackBack

http://agorass424.blog43.fc2.com/tb.php/1139-5fac70bc

プロフィール

ナンシー☆チロ

Author:ナンシー☆チロ
映画と本のつれづれ日記。
マイナー路線でごめんなさい。
サッカーも好き☆
過去記事へのコメントも歓迎です。
尚、宣伝目的や記事に関連のないリンク・コメント・トラックバックなどはこちらで削除させて頂きますので、ご了承下さい。

追記・その他

  (2017/07/15) 「FATHERS」に追記あり。 プーン役のAsda Panichkulは元MTVアジアの人気VJで東南アジアでは有名人。 ユク役のNat Sakdatornはタイのタレント発掘番組で優勝した実力派シンガーソングライター。

リンク
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ(タブ)

最近のトラックバック
カテゴリ
カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

ブログ内検索

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
QRコード

QRコード

RSSフィード