シッコ

「シッコ」
(2007/USA/SICKO)


sicko_bigposter.jpg

ちょっと チクッとしますよ〜☆
(キャッチコピーも効いてます!) 

2002年、『ボウリング・フォー・コロンバイン』で銃社会に突撃!!
アカデミー賞受賞(長編ドキュメンタリー賞)!!
2004年、『華氏911』ではブッシュ大統領に突撃!!
カンヌ国際映画祭最高賞パルムドール受賞!!
そして2007年、新たな標的となるのは、世界中の誰もが関わりをもつ、医療問題!!
第60回カンヌ国際映画祭特別招待作品


観ている内、ヒトゴトと思えず身につまされ、だんだんクラくなってきた・・・。



先進国で唯一国民健康保険制度のないアメリカ。
6人に一人が無保険で、毎年1.8万人が治療を受けられずに死んでいく。
しかし、『シッコ』 はちゃんと保険に入っている人々についての映画だ。 

え?  なら、何の問題があるの?  大ありだ!

アメリカでは、国民は民間の医療保険に加入するのだが、いざケガや病気になると、「適応外」で、治療を受けられないことが多い。
たとえば、救急車を呼んでERに行った女性には、救急車を呼ぶ事前申請違反。

――救急車を呼ぶのに、あらかじめ申請を出せってどういうこと!?

お怒りごもっとも。
この申請却下、ヤ○ザのいちゃもん、ナンクセつけるのと同じなのだ。
それ専門のプロもいる。
申請書のアラ探し=記入もれや申告もれをみつけ却下、その人の過去の通院データを探偵のように集め、本人も忘れているような小さな過去の病気をみつけ、既往症欄に記入しなかったからと言って、治療申請却下する。
多くの保険は支払われないから、保険会社は大もうけ。

さてここで、
あら、クリントン政権時、ヒラリーが公的医療保険改革に取り組んでいたのではなかったかしら? 
と思いだす人もいるのでは?

巨大な保険業界は、カネにものを言わせて、巨額の献金で政治家を操り、次々と法案をつぶしていたのだった。

この構図は、<ボーリング・フォー・コロンバイン> と同様。
銃規制の動きと全米ライフル協会のロビー活動といっしょだ。
ここがアメリカの SICKO!(ビョ〜キ!) なところ。

Bowling for Columbine (Sub Dol)Bowling for Columbine (Sub Dol)
(2003/08/19)
Michael MooreDick Clark

商品詳細を見る


こういった、いささかおカタい政治的な問題を、マイケル・ムーアはおもしろおかしく見せていく。
古いモノクロのニュース映像やアニメをモンタージュのように挿入したり、美術的にもいい。

こどもの治療に関して、保険会社とやり合っている家に取材に行くムーア。
父親がちょうど保険会社と電話中。
「今、マイケル・ムーアが取材に来た」 と言うと、すぐ責任者から電話が入り、あんなに 「適応外」 と言われ続けた申請に許可が出たのには笑ってしまった。
こういうユーモアを交えるセンスも、マイケル・ムーアの持ち味だ。

マイケル・ムーアのコメント:
――映画を作っていてこんなに辛かったことは、これまでなかったよ。
撮影している間にも人が死んで行くんだ。
スタッフの気持ちもダウンしてしまうから、僕はムリにでもユーモアの
センスを保つように努力していた。


”人の生き死に” を 企業が決めるって、どう考えてもおかしいではないか。

さて、諸外国の現状はどうなのか?
すぐとなりのカナダに住む親戚に話を聞くことに。
ムーアのいるミシガンに行く前に、カナダに来て欲しいという叔父夫妻。
待ち合わせのシアーズに行くと、二人は保険会社のカウンターで保険の手続きをしていた。

――ミシガンに数時間行って帰って来るだけだよ
――万一の為よ。 保険なしではアメリカに行けないわ


同じような人々がカウンターにたくさん来ていた。
アメリカの医療費は高額で、カナダはタダなのだ。

叔母の話 :
――おともだちがハワイに行って、頭にケガをしたの。
治って帰って来たら、治療費は60万ドル。
中流のカナダ人に払えると思う? 
アメリカ批判をしているわけじゃないわ。 事実を話しているだけよ。


もちろんこのケガがカナダ国内であればタダだ。
こういったエピソードの見せ方もうまい。

そして、ヨーロッパへ飛ぶ。
イギリスの国立病院はタダ。 会計窓口そのものがない。
疑うムーアは、病院の隅の 「キャッシャー」 と書かれた小さな窓口を発見!
なんだ、やっぱりあるじゃないか!
ところが!

ここは ”病院側が支払いをする” ところだった!
低額所得者は、病院までの交通費をここで受け取ることが出来るのだった。
このエピソードもうまいね。
イギリスに旅行してたまたま病院のお世話になった人が、治療費はタダだった、という話を聞くがほんとだったんだな・・・。

sicko02.jpg
イギリス 国立病院の医師。 国立病院でも待遇は(かなり!)良い。 
基本給に歩合給が加算されるので、モチベーションも上がる。


そして、フランス・・・あまりに恵まれすぎて言いたくねーです。
(うらやましさを通り越してねたみ・・・)
家族に優しいフランスの制度、医療・教育・・・大学の授業料もタダ。
パートも正社員も年間の有給休暇は5週間。 法律で決まっている。
家族でゆっくりバカンスに行ける。

――この国には絶望感がない


在仏アメリカ人の言葉が心に残る。
今の日本と反対ですね。

sicko03.jpg
出産して退院していく一家。 イギリスの病院にて。
一銭も払うことなしに・・・ ハッピー☆


最後にムーアは、9・11のボランテイア消防士・救命士たちとキューバに無断渡航する。
グラウンド・ゼロに駆け付けたボランティアたちの多くは、重度の呼吸器疾患に悩まされている。
ボランティアに医療手当は出ない。 その為、職も失い困窮している人々も多い。
薬代も高額だ。

sicko01.jpg
海上から強行突破!! 
(となりにいるのが、ボランティア救命士たち)


キューバは1ブロックごとに薬局と病院がある。
シングルマザーのボランティア救命士は、薬局でいつも飲んでいる薬の値段をたずねる。
――アメリカでは 120ドルするのよ。

答えは なんと


5セント

彼女は泣きだす。

――5セントってなによ!?

彼女の涙に、こちらもほろっと来た。


今作では、いつものムーア体当たり突撃取材はない。


――今回は違うアプローチにしたかった。
僕は今回同胞のアメリカ人全員に立ち向かっている。
「このままでいいのか? 君たちは幸せなのか?」
僕らの国はおかしい、と感じ、行動を起こさない限り、アメリカの状況は変わらない。



この作品が公開された、2007年8月、プロモーションなどを観ている限りでは、対岸の火事感があったが、今となっては身につまされる事態になって来ている。
今の日本に保険証のない子供が3万人、高齢者医療費の引き上げ・・・このままではアメリカに近づいてしまうぞ!

――僕はいつも政治的メッセージを伝えるだけでなく、
映画としての娯楽性も考慮して作品を作るようにしているからね


やっぱりムーアの ”見せ方” のうまさには脱帽するのだった。
(ま、この娯楽性がフマジメできらい! と思う人もいるだろうけど)


ところで、この映画を観て、わかったことがひとつある。

「医療が充実した国は、医者の数が多い」

(あたりまえのことだが、真理)

「土日は、宿直医が一人」 なんていうことは考えられないに違いない。





ちんぷんかんPageTop<MILK> 無事完成したもよう

Comment

日本公開当時ワイドショーの映画コーナーでも散々紹介されましたが、面白いけれど『ボウリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』での様に突撃せず、その不真面目さと”超大国”アメリカに物申すといういい人ぶりが鼻につく…こんな評が多かったんじゃないでしょうか?
今公開されたら、とてもそんな事は言ってられないと思います。次々に露呈する未来が暗くなるような事実。国がお金の使い方を間違っているとしか思えない。日本人て昔からこんなに嘘吐きだったんでしょうか、と悲しくなってしまいます。
イギリスはブレアが大きな医療改革を行った結果が徐々に出ているそうですが、一度荒廃した現場や士気の低下を戻すのは大変なこと。まして医療は技術のいる仕事。
医学部増員しても一人前になるまで何年もかかります。

誰でも必要な時には保険適用で診察が受けられる。
そんな安心が当たり前である事を望みたいです。

■herちゃん

>いい人ぶりが鼻につく…こんな評が多かったんじゃないでしょうか?
そうだったんだっけか?
これが公開された時が遠い昔のように感じる。

>今公開されたら、とてもそんな事は言ってられない
これ、公開時を誤ったね、って、今を予測するのは不可能だったけど・・・。
今年公開されてたら、タイムリーだったのにね。
政治家も、各首長も、医師会も、もちろん国民全員、今一度、これ観るべきだよね。

この作品で印象的だったのが、フランスでこどもを預ける時、1時間1ドルくらいで、ママの話だと「なんといってもスタッフがプロ」なんだと。
日本で、1時間1ドルっていうのもあり得ないけど、日本にプロっていないよねえ。(どの業界でも)
医者もそうだけど、プロにはプロを育てるスタッフのプロがまず必要なんだよね。
遠い道のりに、思わず遠い目・・・。

>誰でも必要な時には保険適用で診察が受けられる。
ほんとにそうだよね。うんうん。

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