小説 重力ピエロ

「重力ピエロ」 井坂 幸太郎

重力ピエロ重力ピエロ
(2003/04)
伊坂 幸太郎

商品詳細を見る


(「BOOK」データベースより)
連続放火事件の現場に残された謎のグラフィティアート。無意味な言葉の羅列に見える落書きは、一体何を意味するのか? キーワードは、放火と落書きと遺伝子のルール。とある兄弟の物語。



現代の日本の作家を読む機会ってなかなかない。

伊坂幸太郎を初めて読んだ。
今どきの作家というのは、こんなにスタイリッシュで軽やかなのかあ。

第5回本屋大賞及び第21回山本周五郎賞受賞(「ゴールデンスランバー」(07))
「このミステリーがすごい!2009年版」 第1位受賞作家
しかもこの作品、70万部を越える大ベストセラーだそうな。

へぇ~知らなかった。すごいのねえ。

――春が二階から落ちて来た。

という文で始まる。
語り手は、兄 泉水。「遺伝子情報」 を扱う企業に勤めている。
「春」 というのは、2歳違いの弟のことである。

「2階から落ちて来た」 というのは、春が高校生の時のある出来事 = 「ジョーダン・バット」 と言われるエピソード内のこと。

このような過去のいろいろなエピソードが、「私」 から語られる。
それと並行して連続放火事件が起きる。

ある日春から電話がある。

「兄貴の会社が放火にあうかも知れない」

翌日予言通り泉水の会社は放火される。

なぜ春は放火を予告出来たのか?
読者は惹き込まれていく。

しかし、これは兄弟愛の物語であり、家族の物語である。

この家族は辛い過去を抱えていた。
泉水と春は異父兄弟。
かつて仙台で未成年の少年による連続婦女暴行事件があった。
母はその被害者であり、その時に妊娠したのが春だった。

両親は兄弟を分け隔てなく愛した。
美しい母、父は優しく、そして強かった。
泉水と春、どちらも英語で「スプリング」
こういう名前をつけちゃうのが、伊坂幸太郎っぽい。


泉水にとって春は自慢の弟だった。
同僚の女子社員に春のことを聞かれた泉水はこう説明する。

――恰好良くて、運動能力も抜群で(2階から飛び降りても無事だ)、
絵も上手だ。芸術的才能に恵まれている。

――そんな男の人だったらモテモテでしょう

――モテモテだね
ただ、女性に興味がないのかもしれない。

――そっち系なんですか

――複雑なんだよ

――人生は複雑なくらいがいいですよ


なんていう会話のやりとりに伊坂幸太郎らしさがうかがえる。
(いえ、これ一冊しか読んでないんですけどね)

春は自分の出自が原因で、”「性的なるもの」 に怨讐に近い嫌悪” を抱いている。
どんな美人に言い寄られても、動じることがなかった。

とにかく春のキャラクターが際立っているのだ。

この話を読むと、血のつながり、遺伝子って何だろうなあ、と思う。
春と父は遺伝上のつながりはないが、”たしかに” 親子なのだ。

――春は俺の子だよ。俺の次男で、おまえの弟だ。
俺たちは最強の家族だ。


終盤は、あれよあれよという展開。
読後感は今イチすっきりしないような・・・。
あとから考えるとこの作品は、ちゃんとミステリのルールを踏襲していて、”伏線” や ”手がかり” を敷いていたのだな

兄弟萌え属性の人には、そこはかとなくいいかも知れない。

兄弟が小さい時、父が出張でいない日曜、母が突然、
「馬でも見に行っちゃおうか」
と、車で2時間かけて競馬場に行くエピソードが好きだ。せつない。

尚、伊坂幸太郎は文庫化に際して手を入れることでも知られていて、文庫版には元版にはない 「燃えるゴミ」 という項が挿入されている。

===
そうそう、黒澤という探偵がさくっと登場するのだが、これがステキなのだ。
鋭いのに無駄な力が抜けていて、頓着なさそうなのにゴルチエのジャケットが似合う。

――黒澤が微笑した。そうすると、一気に、年齢が分らなくなる。
少年から青年、中年の男まで、いずれの年代の男性にも見える。


伊坂幸太郎作品はリンク作があり、黒澤は他の作品にも登場するらしい。

ラッシュライフ (新潮文庫)ラッシュライフ (新潮文庫)
(2005/04)
伊坂 幸太郎

商品詳細を見る


関連記事:
映画「重力ピエロ」

映画 重力ピエロPageTopシーズン終了・・・

Comment

異母兄弟

ほ~~~。
これはなかなか面白いテーマですね。
伊坂幸太郎はいま夫がたまに読んでる。
探せばあるかも。なかったら買わせよう。

追記

聞いてみたら、持っているとのこと。
でもどこにあるのか・・・どこかにあるらしい。
捜索には時間がかかりそうです。

■ゆっきー

> これはなかなか面白いテーマですね。
> 伊坂幸太郎はいま夫がたまに読んでる。

やはり男女を問わず幅広い層に支持されているんだ~
しかし、ゆっきーのダーリン、売れ筋をも押さえているんだね。
えらいなあ。

>捜索には時間がかかりそうです。
次回会合まで捜索がかかりそうなら持って行くよ。
声かけてね。

映画のみ鑑賞だよん
ん~桜の咲く緩やかな雰囲気からの
出演:加瀬亮、岡田将生、小日向文世、鈴木京香俳優陣を見てお分かりでしょうがミステリーとは思えぬふわりとした流れ
異父兄弟という遺伝子捜索と放火事件
交錯しているようなそうでないような
兄弟愛も演出はゆるーり
私があほなのか理解不能のうちend
小説の方が良いのかしらん

■けんちゃん

この時はフレッシュな岡田くんにはまっていた時だった。

> 小説の方が良いのかしらん
映画の方がわかりやすかったよ
映画版もUPしてあるので、見てね~~

Commentの投稿

 管理人だけに表示する

プロフィール

ナンシー☆チロ

Author:ナンシー☆チロ
映画と本のつれづれ日記。
マイナー路線でごめんなさい。
サッカーも好き☆
過去記事へのコメントも歓迎です。
尚、宣伝目的や記事に関連のないリンク・コメント・トラックバックなどはこちらで削除させて頂きますので、ご了承下さい。

追記・その他

  (2017/07/15) 「FATHERS」に追記あり。 プーン役のAsda Panichkulは元MTVアジアの人気VJで東南アジアでは有名人。 ユク役のNat Sakdatornはタイのタレント発掘番組で優勝した実力派シンガーソングライター。

リンク
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ(タブ)

最近のトラックバック
カテゴリ
カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

ブログ内検索

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
QRコード

QRコード

RSSフィード