ハート・ロッカー

「ハート・ロッカー」
(2008/THE HURT LOCKER)


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2004年夏、イラク・バグダッド郊外。アメリカ軍爆発物処理班・ブラボー中隊のリーダーに、ウィリアム・ジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)が就任する。
まるで死への恐怖などないかのように遂行されるジェームズの爆発物処理の様子に、仲間のサンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)らは不安を抱くようになり……。


苦手なジャンルに「戦争モノ」がある。
だから、<地獄の黙示録>も<プライベートライアン>も見ていない。
この作品も当初は完全スルーだった。
しかし、アカデミー賞が近づくにつれ、評価は上がるばかり。
これを見ておかないとオスカーナイトは楽しめない。
マンを持して、オスカーナイト2日前、初日に出かけた。

@TOHOシネマ みゆき座

12:50の回、1時間前に行ったのに完売。
仕方なく次の 3:40の回にしたら、それも前方の数席しかなかった。
アカデミー受賞後の今はもっとすごいことになってるだろうな。



――戦場での高揚感は中毒になる。
戦争は 麻薬だ。

という言葉から始まる。

イラクに駐留するアメリカ軍の爆弾処理班を描く。
戦う相手は見えざる敵、目の前の爆弾、というところがミソ。

しかし、観る者にこれほど緊張を強いるものはない。
ふつー戦争モノというのは、「緊張と弛緩」 を織り交ぜて描かれるじゃないすか。
これは違う。これでもか、これでもかという緊張の連続なのだ。

・・・
・・・あまりの緊張感に途中で気分が悪くなってきた・・・
ああ、やっぱり来なければよかった。だから戦争モノはきらいだよ。
家でDVDを観ていたら、間違いなくここで 「停止ボタン」。

だけど同時に、これは見続けなければいけないと思った。
映画の作り手に、そして今戦場で戦っている人に思いを馳せた。

観ている間、これは映画なんだ、作りモノなんだ、と自分に言い聞かせた。
映像は生々しくリアル。まるでドキュメンタリのよう。
しかし、これは過去の出来事でなく、今実際に起きていることなんだということが、心に重くのしかかって来るのだ。

主人公は爆弾処理班のリーダー、ジェイムズ。
百戦錬磨、爆弾のエキスパート。だがちょっとおかしい。
ひとことで言えば 「命しらず」 なのだが、それともちと違う。
彼は死を怖れていないのだ。
故郷に帰ればかわいい赤んぼがいるのに、なぜ? ――

観るまでは、これはキョーレツな反戦映画と思っていた。
ところがフタを開けてみると、反戦というメッセージは声高に叫ばれない。
ただありのままの現実を目の前にさらすだけだ。

この映画のラスト、みごとに冒頭の言葉にリンクする。
同時にさきほどの「疑問」の答えがわかった。
ジェイムズは ”モンスター”なのだ。
戦争が生み出した「モンスター」であり、「狂気」なのだ。
それに気づいた時、怖ろしさに震えた。

観終わって作品の持つヘビーさに打ちのめされた。
どっと疲れたけど、駅までの道、不思議とすがすがしい気持ちになっていった。
ああ、堪えて堪えて観てよかった。

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このヘビーで骨太の作品を作り上げた キャスリン・ビグローにはまいったぜ。
連日50度のヨルダンでの過酷な撮影、低予算。

――キャスリンはスーパーモデルのように美しい ”スーパータフガール”だ。
撮影隊に彼女以上にタフな人はいなかったよ


ジェイムズ役 ジェレミー・レナーのコメントです。


アカデミー賞の壇上でも、キャスリンの口から反戦のメッセージは聞かれなかった。

――イラク、アフガニスタン、世界中の兵士にこの賞を捧げます。
そして、無事の帰還を


男前だぜ、キャスリン・ビグロー!
彼女からは、政治臭のイヤ汁が感じられない。だからいいんだよね。


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尚、この映画、有名どころは出ていないと思ったら、ガイ・ピアース、レイフ・ファインズ、デヴィット・モースが出ている。
ガイピーは序盤に出て来てあっちゅーまに死んじゃう (重要な役どころなんだけどさ)
他の人も同様で、え、これだけっすか?ってかんじ。友情出演とかってヤツっすかね。
ガイピーはオスカーナイトでも、主要な役二人のとなりに座ってたよ。

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ジェレミー・レナーは役作りの為、実際の爆発物処理班(EOD)のメンバーたちと会った。
――彼らは明晰な頭脳を持ったテクニシャンだけど、
究極に無私だということにも驚いてしまった。
つまりいつ死んでもいいと心に決めているんだ。


EODのメンバーは、イラクでの死亡率は他の兵士の5倍だという。
「ハートロッカー」とは、軍隊用語で「棺おけ」を意味するらしい。

深く考えさせられる一作。

苦手だからって逃げてちゃだめだよね。
ちょっと大人になったチロなのであった。(今さら!?)

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第82回アカデミー賞 2010 PageTop霜花店(サンファジョム) 運命、その愛

Comment

こんばんは♪

>ガイピーは序盤に出て来てあっちゅーまに死んじゃう (重要な役どころなんだけどさ)

今日テレビでガイピーが出るところをちょっとやってたけど、じゃあガイピーの出番あれだけなのね。吹っ飛んでた・・・(泣)

>キャスリン・ビグロー

58才には驚いたわ~~。なんだか50代になることに勇気と希望が湧いてきたよ(笑)

ワタシもそんなに戦争映画は得意じゃなくって、スクリーンでは無理だけど、よく考えたら黙示録、プラトーン、ブラックホークダウン、プライベートライアン・・・と結構観てるな。全部家で観たけど、家で観ても気分が悪くなった・・・。でも逃げてちゃダメだよね。

食べ物食べながらとか、絶対に観れないよね・・・。

恐ろしい現実だわ。
日本人には危機感が欠けていると言うけど、こんな危機感はいらない。
平和ボケでいいの。
生きるか死ぬかぎりぎりの際まで行って、生の充足感を味合わなくていいから。
思想の違いから、徹底的に相手の抹殺を図る繰り返し。宗教も麻薬かしらね。

爆弾処理班の実態を知りたくて検索していたら、3年前の朝日新聞のコラムが…
ttp://www2.asahi.com/special/iraq/TKY200702230097.html
イラクの爆弾処理班実習生の集合写真。発足から三年。
18人のメンバーのうち、生き残りは5名という現実に泣けました。

■りおこさん

>じゃあガイピーの出番あれだけなのね。吹っ飛んでた・・・(泣)

そう、あれだけです。
あれだけでオスカー会場にいられたんだから、ガイピーの扱いは大きいのだろう。
でもやっぱりウツクシイよね、ガイピーは。
顔がホコリだらけでもイケてるもん。
今度はもっと出番の多いヤツでお願いしたい。

> 58才には驚いたわ~~。なんだか50代になることに勇気と希望が湧いてきたよ(笑)

あはは! すばらすぃ~~!
彼女って みちばたジェシカたんみたいだよね。
きっとブランドのドレスとかに興味なんてない人なんだろうな。
ブランドより信念。だから輝いているのかも。

> ワタシもそんなに戦争映画は得意じゃなくって、
って、すごい見てるじゃん!!(笑) えらい!

>全部家で観たけど、家で観ても気分が悪くなった・・・。
>でも逃げてちゃダメだよね。
いえ、それだけ見てたら逃げてないですよ。
勢いで是非これもTRYしてみてちょ。
これだけあおってれば、な~んだ、たいしたことないじゃん、って思うよ。

■アマレットちん

アマレットちん、おつかれちゃん。
> 恐ろしい現実だわ。
> こんな危機感はいらない。 平和ボケでいいの。

「作り物だけど現実」っていうところがこの映画の怖いとこだよね。
同じ地球でこんな恐ろしいことが起きてるって現実。

> 思想の違いから、徹底的に相手の抹殺を図る繰り返し。宗教も麻薬かしらね。
そうかも知れない・・・。解毒のみちすじは見えないもんね。

> 爆弾処理班の実態を知りたくて検索していたら、3年前の朝日新聞のコラムが…
この記事、つらすぎるね(涙)
私この記事読んだと思う。
この映画を見なかったら、今こうまで胸に響いてこなかった。
やっぱりこの映画を作った人たちはえらい。

私この映画を観終わった時、これは作品賞を取って欲しくないと思った。
受賞作と思って安易に見に行ったら重すぎるもの。って思ってたけど、それは大きな間違いだった。
今は多くの人に見に行って欲しい。

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■アンソニーちん

そうそう、
覚悟はしていったのだけど……
だよね。

私も連絡しようと思ってました。
別途メールしま~~す。

■Bさん

好戦的でもなく、反戦的でもない。
おっしゃる通りヒーロー物かもしれない。たしかにこの作品は、”幅広い解釈を与えてくれる”作品ですよね。

私がこの作品から感じたのは、監督が兵士たちに寄り添っているということでした。
なんだかすごくそう感じたんですよね。
こういう戦争映画もありなんだと。

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  (2015/8/24) 「怒り」に追記あり。

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