プレシャス

「プレシャス」
(2009/ PRECIOUS: BASED ON THE NOVEL PUSH BY SAPPHIRE)


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80年代のNY・ハーレムで家族から性的、精神的虐待を受けた16歳のアフリカ系アメリカ人の少女が、周囲の人々の助けを借りながら立ち直ろうとする姿を描く。全米でわずか18館の限定公開で封切られながらも評判を呼び、その後600館まで拡大上映されて大ヒットを記録。


昨年10月、東京国際映画祭 <A SINGLE MAN> を観た帰り、地下鉄で隣りに乗り合わせた二人連れ ―映画関係者? 事情通― の話が漏れ聞こえて来た。

「ほんとは <プレシャス> って作品が来るはずだったんだけど、
アカデミー有力候補になっちゃって急遽来なくなったんだよ」

<プレシャス>? ほえ~ どんな映画なんだろう?
そして、たしかにアカデミー賞候補になり、2部門受賞。
やっと観ることが出来ました。

@TOHOシネマズシャンテ


NY ハーレム、プレシャスは16歳、中学校に通っている。
父親にレイプされ12歳で長女を出産、今二人目の子を妊娠中。それで学校を退学になる。
母親にも虐待され続けるプレシャスは――


前半はプレシャスを取り巻く悲惨な環境を描く。
家の中は常にブラインドが降りてうす暗く、居間のテレビは一日中つけっぱなし。
母はテレビの前に座りっぱなし。
「ぱなし」 は 「なし」 って話です♪ じゃなくて!

そんなこんなで、画面も内容も暗い前半なのだが、ただ暗いだけにならないのは、時折挿入されるプレシャスの妄想:いや、夢想というべきか シーンにある。

肌の色の薄いカレシが欲しい
雑誌の表紙を飾りたい
プロモーションビデオに出演したい


夢想の中で ”実現”されるシーンが、華やかで現実と乖離しているほど ”おかしみ”がある。
この辺りに監督 リー・ダニエルズのセンスがうかがえる。

プレシャスは問題児の集まるフリースクールに通い始める。
ここの担任 ミズ・レインとの出会いが、プレシャスの運命を変えることになる。


このクラス、文字通り 「ABC」から教えてるってことに単純に驚いてしまった。
だって、NYで ”アメリカ人”に 「ABC」の書き方からですよ。
ま、それゆえにアメリカの抱える問題も垣間見えるというもの。

このクラスで、ドつき合いながらも初めてともだちが出来る。
母からは 「バカで役立たず」と言われ続けていたが、少しずつ自信を持って生きようとする。

出産し退院したプレシャスは、家に戻ったのも束の間、転げるように家を出る。
親身になってくれるミズ・レイン宅にしばらく身を寄せる。
その時はじめて、ミズ・レインは同性愛者で、パートナーと暮らしていることを知る。


――ママは 「同性愛は悪」 と言ったけど
この人たちは私をなぐったりしない


ミズ・レインとパートナーは、知的で、愛し合い、互いを尊重し労わり合っている。
初めて ”同性愛者” を見たプレシャスは、母の言うことは ”絶対” ではなく、今まで知らなかった世界の広がりを感じる。
ここのシーンは良かったな。
リー・ダニエルズ監督は、オープンリーゲイだけど、それが彼女たちの描き方に反映しているのか?

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そうそう、この作品って、プレシャスの心の声が聞こえるとこがおもしろいんだよね。
え、ミズ・レインって・・・うそぉ! みたいな。

その後、中間施設(とりあえずいてもいいですよ、みたいなとこ)に移ったプレシャスは、面会に来た母の口から、父の死と同時に最悪なニュースを知る――

人生というのは楽しいことばかりじゃないけど、こんなに不幸のオンパレードがあっていいのかと思う。
16歳の少女が負うにはあまりに重い。

前に見たオムニバス <それでも生きる子供たちへ> の、スパイク・リーが撮ったNYの少女の話を思い出した。
悲しいことにNYでは、プレシャスのような話は特別なことじゃないってことなんだろう。

とはいえ、リー・ダニエルズは深刻ぶって描かない。

――悲しい気持ちで演じる必要はない
観客の涙を誘う演技はしないでくれ


監督から主演のガボちゃんへのアドバイスです。
その言葉通り、最後はほの明るい希望の光を感じる作品でありました。


さてそのキャスティングであります。
プレシャス演じる ガボレイ・シディベ、演技のシロートだというが、それがかえってみょーな存在感になった。

鬼ハハを演じた モニーク。みな 「怖い!」と言うが、怖さ自体は、<鬼畜> の岩下志麻に負けるとチロは思う。
モニーク演じる鬼ハハの表現するところは、怖さだけではないのだ。
第三者に対して取り繕う狡猾さ、自分こそ被害者と訴える厚顔無恥ぶり。
モニークならではの鬼ハハを演じた。→ アカデミー賞助演女優賞受賞

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ミズ・レイン役 ポーラ・パットンが美しい。ステキ~!

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そして二人のアーティストの友情出演も話題のひとつ。
マライヤ・キャリーがスッピン演技! こういう人いそう・・・ってかんじ。

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レニー・クラヴィッツ(右)って、こんないい男だったっけ!? 
リー・ダニエルズ(中)は、アカデミー賞脚色賞を受賞!

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===
妄想シーンのひとつで、ソフィア・ローレン <ふたりの女> が使われてる。
テレビの中のソフィア・ローレンと娘が、やがてプレシャスと鬼ハハになり替っていく。
ソフィアローレン親子とは似ても似つかないトド親子がイタリア語のセリフをしゃべるのが笑える~
そういう笑いのセンスみたいなのが全編にわたって感じられるんだよね。


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ママとよばないでPageTopただ、ひとりの父親

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映画と本のつれづれ日記。
マイナー路線でごめんなさい。
サッカーも好き☆
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追記・その他

  (2017/07/15) 「FATHERS」に追記あり。 プーン役のAsda Panichkulは元MTVアジアの人気VJで東南アジアでは有名人。 ユク役のNat Sakdatornはタイのタレント発掘番組で優勝した実力派シンガーソングライター。

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