小説 瘋癲老人日記

「瘋癲老人日記」 谷崎潤一郎

鍵・瘋癲老人日記 (新潮文庫)鍵・瘋癲老人日記 (新潮文庫)
(1968/10)
谷崎 潤一郎

商品詳細を見る



七十七歳の卯木督助は“スデニ全ク無能力者デハアルガ”、踊り子あがりの美しく驕慢な嫁颯子に魅かれ、変形的間接的な方法で性的快楽を得ようと命を賭ける―妄執とも狂恋とも呼ぶべき老いの身の性と死の対決を、最高の芸術の世界に昇華させた名作。(「BOOK」データベースより)


映画 <瘋癲老人日記> ヲ観テ、原作ガ読ミタクナッタ。
ナノデ、予ハ今ゴロ読ンデイルノデアル。(モット早ク読ンデオクベキダッタ)
実ハ、コノ文庫ハ数カ月前ニ 「鍵」 ヲ読ミタクテ勢イデ買ッタノダ。
シカシ、放置プレイノママ置イテアッタノダガ、トンダトコロデ役ニ立ッテヨカッタ。

ゴ存ジノヨウニ、コノ小説ハ 「カナ」 デ書カレテイル。
読ミ始メテシバラクハ、何トモ読ミヅラク苦シカッタノダガ、シバラクスルトコレガ不思議ナアジワイトナッテクル。
ソレダケデナク、コノ文体ガミョーニ病ミツキニナルノダ。

コノ作品ヲヒトコトデイウト、 「諧謔」 (かいぎゃく) デアル。
全編ヲオオフ突キ抜ケタユーモアセンス。
deep ナ話ニモカカワラズ、可笑シクテ何度モ笑ッテシマッタ。

・・・
すいません、「カナ」表記はかなり疲れるのでこの辺でヤメニシマス。

この日記を綴っているじーさんは、77歳の今、もはや性的には不能なのだが、長男の嫁・颯子に執着することで性的欲求を昇華させている。
リウマチで満身創痍だが、食欲は旺盛でよく食べる。
歌舞伎を観た帰り 「浜作」で鱧の梅肉を食べ、京都に自分の墓の相談に行っては、昼は「瓢亭」の半月弁当、夜は「吉兆」と谷崎らしい優雅な世界である。
よく食べるというのは好ましく、またこのじーさんは、文学や芸術に造詣が深く教養もある。
日記を見る限り自分を客観的に見る術があり、なんだか可愛げのあるじーさんなのだ。
全てを斜に構えて見るところもおもしろい。

――コレモ一種ノ嗜虐的傾向ト云エバ云エヨウ。
若イ時カラソウ云ウ傾向ガアッタトハ思ハナイガ、老年ニ及ンデダンダントコンナ工合ニナッテ来タ。
ココニ同程度ニ美シイ、同程度ニ予ノ趣味ニ叶ッタ異性ガ二人イルトスル。
Aハ親切デ正直デ思イ遣リガアリ、Bハ不親切デ嘘ツキデ人ヲ欺スコトガ上手ナ女デアルトスル。
ソノ場合ドチラニ余計惹カレルカト云エバ、近頃ノ予ハAヨリBニ惹カレルコトハ確カデアル。(P,203)


この件を読んだ時、あはは!と笑ってしまった。
しかし歳をとるごとに趣味が deepになっていくというのはわからぬものでもないわね。

またも懲りずに、どさくさに紛れて颯子の肩に接吻したじーさんに

――ト、思ッタ途端ニ左ノ頬ニ
「ピッシャッ」
ト平手打チヲ喰ッタ。

「オ爺チャンノ癖ニ生意気ダワ」 (p.229)

という颯子のセリフにもウケてしまった。

最後にはじーさんは自分の墓に颯子の足形を「仏足石」(お釈迦様の足の裏の形を表面に刻んだ石)に見立てて石屋に掘らせることにする。

――ドウセ予ハ神仏ヲ信ジナイ、宗旨ナドハ何デモイイ
予ニ神様カ仏様ガアルトスレバ颯子を措イテ他ニハナイ。(p.346)


そして死んで骨になって、墓の下で颯子の足で踏みつけられていたい。
ここまで考えることが出来るというこのじーさんにあっぱれ! をあげたい。

原作を読んでいると、じーさんはいつも 「こんなことを言ったら、颯子はどんな顔つきをするのか」と考え、颯子はじーさんを挑発するようなことをし、互いに腹のさぐり合いやかけひきをし合い、二人はそれをひとつのプレイのように楽しんでいるかにも見えた。

最後に、じーさんの容体が悪くなったので、看護婦・主治医・長女の日記が記してある。
はじめて第三者の視点で語られる。
これを読むと、じーさんの日記は果たしてどこまでが真実でどこまでが妄想なのか?という疑問も生まれる。
いやはや、なんとも小憎らしい作品である。

===
さてせっかくなので、原作と映画を見て感じたことを記してみたい。
原作を読んで、私の中のじーさん像は、<鍵>でじーさん役を演った中村雁治郎のようなかんじ。
このじーさんはがんこで依怙地なんだけど、精神の自由さを感じるところがある。
若い時はそれなりに遊んだようだし(性病をもらったことあり)、”粋人” という印象。

なのでこの役を山村聡にした時点で全く別の話になってしまう。
いくら熱演しても、この人の持つ生真面目さ、インテリ臭(東大卒デスカラネ)みたいなのは出ちゃうもんね。
原作を読んでいなければ、それはそれでいいのかも知れないし、この役を、”あの” 山村聡が演る、という意外性を狙ったキャスティングならありかも。
いやしかし山村聡、よく演ったよ、この役。どんな心境だったのか聞いてみたかった。

鍵 [DVD]鍵 [DVD]
(2007/09/28)
中村鴈治郎(二代目).京マチ子.仲代達矢.叶順子

商品詳細を見る


一方、颯子デアル。
コンナ件ガアル。

――猫ヲカブッテイル時ノ彼女ハ、何処カラ見テモ立派ナ奥様ノ貫禄ヲ備エテイル。
言語動作ガキビキビトシテ、目カラ鼻ヘ抜ケルヨウデ、ソレデイテ情味モアレバ
愛嬌モアッテ人ヲ外ラサナイ。(P.248)


ドウダ! 正ニ文子サマノコトデハナイカ! (あ、もうやめるって言ったんだわよね)
これはもう、文子サマに誰にも異論がないはずよ!





リプリー 暴かれた贋作PageTop映画 瘋癲老人日記

Comment

Commentの投稿

 管理人だけに表示する

プロフィール

ナンシー☆チロ

Author:ナンシー☆チロ
映画と本のつれづれ日記。
マイナー路線でごめんなさい。
サッカーも好き☆
過去記事へのコメントも歓迎です。
尚、宣伝目的や記事に関連のないリンク・コメント・トラックバックなどはこちらで削除させて頂きますので、ご了承下さい。

追記・その他

  (2017/07/15) 「FATHERS」に追記あり。 プーン役のAsda Panichkulは元MTVアジアの人気VJで東南アジアでは有名人。 ユク役のNat Sakdatornはタイのタレント発掘番組で優勝した実力派シンガーソングライター。

リンク
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ(タブ)

最近のトラックバック
カテゴリ
カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

ブログ内検索

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
QRコード

QRコード

RSSフィード