あの頃、僕らは-いま語られるエイズの記憶

「あの頃、僕らは-いま語られるエイズの記憶」
(2011/USA/WE WERE HERE)


wewere05.jpg


30年前のサンフランシスコで、ゲイ男性の間に奇妙な病気が拡がり始めた。原因も、感染ルートも、治療法も不明。この病気にかかった者は確実に死 に向かっていく…。当時をよく知る住民の貴重な証言と記録映像を交えながら、エイズの到来がコミュニティに与えた衝撃を深く掘り下げる、迫真のドキュメン タリー。


【第20回 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(2011)上映作品】



かつての ”あの日”: '80年代のサンフランシスコを、”証人” である5人が今語る。


映画の冒頭で一人のゲイのこんなコメントがある。

――あの時のことを若いヤツに聞かれた時、
「まるで ”戦場” だった」 と答える。
実際に行ったことはないけどね。
どこからいつ爆弾が降って来るかわからないんだから


彼の言葉を借りるなら、この5人は戦火をくぐり抜け奇跡的に生き延びた ”生存者”(サバイバー)であり、共に闘った戦友である。

5人はそれぞれ異なった立場の人たち。

エド  : ゲイ。ずっとボランティアで患者のケアをして来た。

ダニエル: アーティスト。自分もHIV+。何人ものパートナーを見送った。

ポール : 政治的活動を通して仲間の為に戦った。ゲイ。

ガイ  : カストロの花屋。ゲイ。元ダンサー。店先から人々をずっと見て来た。

アイリーン: 看護師。エイズ治療の拠点となったサンフランシスコ総合病院に勤務。レズビアン。

エドは、ゲイだがカレとのつき合いには、”昔気質” のポリシーがある (要するにむやみにハッテンしないってこと)。
結果的にそのおかげで感染しなかった。
奔放なゲイライフを送った人々が多い中、こういう人もいるんだな、と印象深かった。


享楽的な'70年代を経て、'80年代に入りなんだかわからない病気がゲイの間に拡がり始める。
原因も治療法もわからない。明らかなのは一度かかると確実に死に向かうという事だけ。
この渦の中にいた人たちの不安と恐怖はいかばかりだったか。

この病気はカボシ肉腫といわれる斑点のようなものが体のいたるところに表われる。
また脂肪や筋肉が落ち、げっそりと面変わりしてしまう。

「いい意味でも悪い意味でもゲイは外見に気を使う。
この病気が外見をすっかり変えてしまうことがいっそうこたえた」

ダニエルのこの言葉が印象に残っている。
そこがこの病気の残酷なところ。
被写体となった人たちを見て胸が痛んだ。


作品としては、ドキュメンタリーのオーソドックスな手法を取っている。
5人のインタビューと、当時の映像や画像などを交えたもの。
淡々と綴られるが、観る者を全く飽きさせない。
こういうのに弱いという自覚はあったけど、ずっと涙がとまらなかった。


前半は気丈に当時を振り返っていた彼らだが、後半はみな涙ながらに語る。

エドは、身近に多くの患者を見て来た。いつまでやればいいのか、もう限界だった、と涙する。
ダニエルは、目の前でパートナーを失う悲しさを何度も味わった。あの頃の友人はみな死んでしまった。生き残ったのは自分だけ。
ガイは、あの時一体どれくらい葬式の花を出した事か。
アイリーンは、看護師長として、治療薬の研究開発の為に奔走した。
患者たちはみな一様に協力的で、「自分の体を使って欲しい」と言ってくれた。
彼らは本当に献身的で、彼らがいたから今日の特効薬がある、と彼女は言う。
(彼女は医療の現場でもっとつらい経験をいろいろした)

wewere04.jpg


最後には、みな笑顔で話を終える。
エドは、”あの頃” を知らない若い恋人が出来た。
ダニエルは特効薬のおかげで元気だ。創作活動に励んでいる。
(今はいい薬があってこんなに元気でいられるのね、と驚きました)
ポールは、患者数が激減して最近は啓蒙活動をしても今ひとつ関心が薄いと嘆く。


エイズがコミュニティにもたらした影響は数多くある。
映画の中でも、かつてあまり仲の良くなかったゲイとレズビアンの関係が良くなったことが描かれる。
レズビアンの人たちは、献身的に彼らをケアした。
以前読んだ本には、古くから住んでいる地域の住民(ヘテロ)も、彼らをケアすることで融和がなされた、とあった。
人は時として全く無力であるけれども、人と人のつながりは強い。そんなことを思った作品だった。

あの時、このニュースは衝撃的だった。
しかしそれも遠い記憶になりつつあった今日、この作品を見ることが出来て良かったでした。
レーガン政権の無策がエイズの蔓延を助長したこと、エイズ患者の隔離政策法案が上がったこと(反対運動により却下)などなど、知らなかったことがいろいろあった。

wewere03.jpg


===
上映後トークイベントあり。
ゲストは、生島嗣さん(NPO法人ぷれいす東京理事/相談員)、長谷川博史さん(NPO法人ジャンププラス代表)、マダム・ボンジュール ジャンジさん(非営利団体akta代表)

たまたま少し前に、長谷川さんの著作 <熊夫人の告白> を読み終わったところだったので、まさかご本人にお目にかかれるとは。感激です。
→ 後日UP予定

トークの中で、「コミュニティの作り方」としても興味深く見た、という話が。
患者をケアする者、医療従事者、政治的な働きかけをする者などなど、それぞれの立場の人たちがコミュニテイを作って活動していた。
ああ、そういう見方もあるんだなあと目からウロコ。

この日だけでなく、今回の映画祭でもいろんなNPOや団体の代表がゲストで来て、こんなに様々な団体が活動しているんだと知りました。
映画祭って、楽しいだけじゃない。一粒で二度も三度もおいしい。


ボクらのはっちゃけウイークエンドPageTopLAに恋して

Comment

泣いちゃうのを覚悟で

次回はこういう社会派のゲイ映画を見てみたいわ。

また図書館でエイズ本読書始めようかな。

鉛筆で線引きしてある本が何冊もあってさ、
あ、またこの人と同じ本借りてる・・・

この人、エイズなんだろうかって思って
借りては読みしていた頃がありました。

>映画祭って、楽しいだけじゃない。一粒で二度も三度もおいしい。

グリコ映画祭。そういやグリコのあの走ってる青年も
それっぽいといやあそれっぽいかw

■うわずみばるこさん

> 次回はこういう社会派のゲイ映画を見てみたいわ。

来年また骨太の作品が来るといいね。
ゼヒ参加しよう!

> 鉛筆で線引きしてある本が何冊もあってさ、
> あ、またこの人と同じ本借りてる・・・
> この人、エイズなんだろうかって思って
> 借りては読みしていた頃がありました。

図書館の本ってそういう(他人との)交流みたいのがあるよね。

> グリコ映画祭。そういやグリコのあの走ってる青年も
> それっぽいといやあそれっぽいか

あはは!! そういうやあそうかも(笑)

Commentの投稿

 管理人だけに表示する

プロフィール

ナンシー☆チロ

Author:ナンシー☆チロ
映画と本のつれづれ日記。
マイナー路線でごめんなさい。
サッカーも好き☆
過去記事へのコメントも歓迎です。
尚、宣伝目的や記事に関連のないリンク・コメント・トラックバックなどはこちらで削除させて頂きますので、ご了承下さい。

追記・その他

  (2017/07/15) 「FATHERS」に追記あり。 プーン役のAsda Panichkulは元MTVアジアの人気VJで東南アジアでは有名人。 ユク役のNat Sakdatornはタイのタレント発掘番組で優勝した実力派シンガーソングライター。

リンク
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ(タブ)

最近のトラックバック
カテゴリ
カレンダー

06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

ブログ内検索

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
QRコード

QRコード

RSSフィード