スキャンダルの時代

「スキャンダルの時代―人はなぜ覗きたがるのか」 海野 弘

スキャンダルの時代 ―人はなぜ覗きたがるのか (集英社新書)スキャンダルの時代 ―人はなぜ覗きたがるのか (集英社新書)
(2000/04/17)
海野 弘

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映画スター、ミュージシャン、政治家、大金持ち、貴族や皇室…。庶民は自分の手の届かぬ著名人たちのスキャンダルに熱狂する。ケネディ、モンロー、ダイアナ元妃からクリントンまでの陰の生活。

いつもチロルの好きなものを詳らかにしてくれる、尊敬する先達 海野弘センセの新書。
おもしろかった!
読み終わるのがもったいないと思うくらいおもろかった。


人はなぜスキャンダルを楽しみ熱狂するのか?
くだらないとわかっていながら、なぜテレビのワイドショーやニュースを見てしまうのか?

そう、そうなんだよね。
自分でもわかっているのに、なぜ見ることをやめられないのか?

そんな命題に、海野弘センセは、
”膨大な資料を駆使し豊富な実例を引きつつ、
人間の奥底にひそむ精神の隠された一面を痛烈に描き出す”

二十世紀は実にスキャンダルの世紀でもあった。
かつて地域的なのぞき見や噂話でしかなかった醜聞が、メディアの発達とともに一気に国家レベルのスキャンダルへと広がって行った。

二十世紀のスキャンダルはメデイアの歴史にもなっている。
タブロイド、テレビ、インターネットと、スキャンダルメデイアは過激になって行く。

こういった大局的な捉え方にうなずきながら、海野弘らしいディテイルに、はあはあしながら読んだ。

今回おもしろいと思ったのは、最近観た映画に出て来た実在人物のその後や裏側を知ることが出来たこと。

<J・エドガー> に出て来た空の英雄リンドバーグ、映画ではジュシュ・ルーカスが演じた。
悲劇の事件後、リンドバーグは事件をめぐるアメリカのジャーナリズムに嫌気がさし、英国に逃れた。
そしてなんと、ファシストになっていたのだった。
アメリカの個人主義・民主主義に反発したのだろうか、全体主義・ファシズムへ傾斜して行く。
1936年にはヘルマン・ゲーリングに招かれてドイツを訪れている。
ドイツの軍事力に感嘆し、英国首相ボールドウインにドイツ空軍にかなう国はないと進言する。

scandal02.jpg ”空の英雄”


そしておもしろいのはこの後だ。
スキャンダルというのはなぜかいくつかがつながって行くのだ。

<英国王のスピーチ> に登場した 「王冠を賭けた恋」 には隠された真実があった。
エドワード八世 ガイ・ピアースが演じた。

この時期英国では、ナチスに心酔する極右運動が盛んになっていた。
その中心人物はオズワルド・モズレ―卿で、様々なコネクションを持っていた。
エドワードはその心酔者の一人で、シンプソン夫人もナチ派と親しかった。
(この時英国滞在中のリンドバーグはエドワードと会っていた)

MI5(英国諜報機関 MI5は 「国内」、MI6が 「海外」 担当というのも初めて知ったよ) から、エドワード=シンプソンのナチコネクションの報告を受けたボールドウイン首相は危機感を抱き、ひそかに退位させる計画を進めた。
つまり、本当のスキャンダルはシンプソン夫人とのロマンスではなく、ナチ・コネクションだったわけである。
それを隠す為に、恋の為に王位を捨てるというシナリオが書かれたのであった。

これを読んだ時、ええええーーーーーっ!!!! だったけど、
その後、今となってはこの裏話はけっこ知られたことだったというのを知った。うーーむ・・・。

scandal01.jpg


その他、”美しきいけにえ” マリリン・モンロー、シャロン・テート事件、ジョン・ベルーシの死など、今あらためて見て興味深いスキャンダル満載。
また、五〇年代の英国スパイ事件に登場するケンブリッジ出身の若きエリートたち四人はホモセクシュアルの絆で結ばれていた、という裏話にはあはあしたのだった。(海野弘センセらしい)

===
さて、スキャンダル史の上で、ケネス・アンガー <ハリウッド・バビロン> は避けて通れないはず。
まして海野弘は、その監修を引き受けてるし。
もちろんありました。
<ハリウッド・バビロン> に一章を割いている。

「スキャンダル史は、<バビロン> 以前と以後に分けることが出来るだろう」
と海野弘は言う。
すごいな、<バビロン> は、AC/DC ですよ。

そしてなんと <バビロン> の最初の監修者の候補は淀川長治氏であった。
淀川さんは、スターを傷つける本の監修はできない、と断ったという。 
海野弘は、 「古きよき時代の映画評論家の見識を示す見事な態度である」 と言ってます。

――この本は、「スキャンダル」 の見方を根本的に変えた。
卑俗でおぞましいスキャンダルは、表現として、アートとして再発見されたのである。


全く言い得て妙で、<バビロン> は、ハリウッドスターのスキャンダルを 「神話」 に変えたのだった。


Hollywood Babylon: The Legendary Underground Classic of Hollywood's Darkest and Best Kept SecretsHollywood Babylon: The Legendary Underground Classic of Hollywood's Darkest and Best Kept Secrets
(1981/11/15)
Kenneth Anger

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――スキャンダルは見られる人(セレブリティ)と見る人(大衆)の二重構造になっているが、両者の間には壁があり、そこにのぞき穴が開いているのだ。
選ばれた人は、一種のいけにえなのだが、その代償に大きな特権が認められる。美貌や栄光や富である。それがセレブリティである。
それらの特権を与えられる代わりに、まなざしの暴力に耐えなければならない。それが有名税といわれるものである。


壁に穴が開いていたら人は覗かずにはいられないし、現代ではテレビはもはやのぞきのメデイアである。
スキャンダルは人々のストレス解消、ガス抜きの効果を持つ。
これを読むと、スキャンダルに夢中になることはそんなに悪い事じゃないんでねーの?と思うのだった。
スキャンダルに夢中になれるのは世の中が平和な証拠、大いにのぞこうではないか!? おう!

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Comment

せんせい

海野せんせい自身はどうなんですかね、やっぱりあっち?そっち関係はかなり読んだけどさ。

ナチのくだりはおもしろい解釈だ!

■白みるくさん

> 海野せんせい自身はどうなんですかね、

こういうセンセのデータはなかなかないですよね。
どんなお顔なのかも知らない。
いまだにお元気そうでなにより。

> ナチのくだりはおもしろい解釈だ!
たしかに親ナチ派の国王が誕生したら危険きわまりないすからね。
エドワードは王位を捨ててまでシンプソン夫人と結婚したかったか、
というとそうじゃない、みたいな書き方をセンセはしていたよ。

詰め腹を切らされた形だね。
国民の支持で結婚できると甘く見ていた、自分の人気を過信していたとも。

こういう話を知っちゃうと、あんなにダンデイなエドワードが
急につまんない男に見えて来るな。

とても、面白そうな本ですね。いつも紹介ありがとう!
シンプソン婦人が親ナチというのは、もろもろの書物に出てきていましたが、エドワードに関しては目にしたことなかったです。やはり元イギリス王ということで意識的に隠されたのでしょうかね。

■タラさん

> とても、面白そうな本ですね。いつも紹介ありがとう!
これは絶対おススメです。
何から何までチロルの好みというのは差し引いても、興味深い内容でした。
図書館にもきっとあると思います。

> シンプソン婦人が親ナチというのは、もろもろの書物に出てきていましたが、
あ、そうなんだ。このあたりまではある程度オープンだったのか。
隠された秘密も時とともに明らかになるってことですね。
それはある意味、英国の健全な部分かも。
もっともそれ以上に ”隠されたままの秘密” も依然あるでしょうが。

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映画と本のつれづれ日記。
マイナー路線でごめんなさい。
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追記・その他

  (2017/07/15) 「FATHERS」に追記あり。 プーン役のAsda Panichkulは元MTVアジアの人気VJで東南アジアでは有名人。 ユク役のNat Sakdatornはタイのタレント発掘番組で優勝した実力派シンガーソングライター。

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