楽日

「楽日」
(2003/台湾/不散/GOODBYE, DRAGON INN)


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(2007/02/23)
リー・カンション

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閉館の日を迎えた台北の古い映画館“福和大戯院”を舞台に、往年の映画スターである老人、足の悪い受付の女など、まるで幽霊のような登場人物たちが織り成す滑稽で哀切あふれる人間模様を描く。


2003年ベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞受賞作品。



@キネカ大森

映画館を舞台にした作品は、やっぱり劇場で観たいもんですね。



台北の映画館 「福和大戯院」 が閉館することになった。
その最終日、かつては盛況だったが今は人影もまばら。
スクリーンには、キン・フ―作品 <残酷ドラゴン・血斗!竜門の宿> (’67) が映し出されている。
そこに一人の若者が入って来る・・・。


なんて不思議な映画だろう。
こんな映画ありなんだ。

足の悪い受付係の女が一人で仕事をこなしている。
切符を売り、トイレを見回り、客席をそうじする。
「福和大戯院」 は広い。
そこを女は不自由な足で回る。
カメラは彼女の歩調に合わせるかのよう。
映画全体にゆったりとした時間が流れる。
(あまりにゆったりとしているもんで、何度か意識がモーローと・・・)

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一方、 「福和大戯院」 は今やハッテン場となっている。
若者は ”その為” にやって来たのだった。
同じ目的の男たちが、客席、トイレ、階段、バックヤードと相手を探して広い映画館を移動する。
私たち観客は居ながらにしてこの映画館のすみずみまで見て回ることが出来る。
そう、足の悪い受付係とハッテン場の男たちは、 「福和大戯院」  の案内人だ。

ことほどさように、この映画の本当の主役はこの映画館なのだ。
ここって、もしかして <ふたつの時、ふたりの時間> (2001) に出て来た映画館? と思ったらやっぱりそうだった。
その時の撮影が縁でその後閉館を知った蔡明亮が、半年間借り受けて今作品を撮影した。

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リー・カンション、チェン・シアンチー 他

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客席にスクリーンを食い入るようにみつめるシブいおやじが一人。
若い時にはさぞ男前だったろう。
若者はおやじにロックオンし、となりに移動する。
モーションをかけるが、おやじはスクリーンに見入っている。
あきらめた若者はまた移動する。

もう一人、孫を連れたじーさんがやはりスクリーンをみつめている。
スクリーンのクローズアップとおやじたちのアップ。
やがて観客は、スクリーンの中の役者とおやじたちが同一人物と気づく。
シブいおやじは、スクリーンをみつめながら涙を流す・・・。

消えて行く映画館、かつてスクリーンで活躍し今は年老いた男たち、どうやったって感傷的になるところをハッテン場の男たちを同時に描くことで、不思議な緊張感とどこかユーモラスな空気が漂う。これぞ蔡明亮の真骨頂ではないか。
→ ハッテン場となる男子便所のシーンとかなんだか笑っちゃった。(蔡明亮はやっぱりトイレがスキ)

後半、館内のハッテンスポットで優雅に煙草をふかす男 (陳昭栄/チェン・チャオロン) に若者が言う。

―― 俺、日本人なんです (日本語で)

と聞いた時、え、日本人だったの!?(またかい?) → 三田村恭伸 と同時に、あれ、ここまでセリフがひとこともなかった! と気づく。

主役の二人、受付係の女と映写係(李康生/リー・カンション) も最後までセリフがなく、李康生にいたっては最後の最後になってやっと登場する始末。→ これを主役と言っていいのかどうか?(笑)
→ この二人は <西瓜> の主役でもある。

busan01.jpg


そして圧巻のラスト。
上映終了後の客席を映すカメラ、不動のショットは5分間続く。
誰もいない客席をただただ延々と映す。

あれ、フィルムがとまっちゃったのかな? と思った。
ヴェネチア映画祭ではこのショットはハプニングとして語られ、観客の反応は二つに分かれたという。

なんとも言えない気持ちになる。
今まさに消えて行くことへのむなしさ、寂寥感、やり切れない気持ち・・・。
それはまたノスタルジックでせつない。

うーーむ、蔡明亮って・・・すごいな。

===
シブいおやじは、往年のスター 石雋(シー・チュン)。
そしてじーさんは、蔡明亮組 苗天(ミャオ・ティエン)。
苗天がかつてクンフースターだったなんて知らなかった。

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とにかく苗天は、<河> (1997) の印象がキョーレツで。
ハッテンサウナでコトの後、電気がついたら相手は父と息子だった・・・という。

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<河>(1997) 李康生が若い!!


往年のスターをよくもまあまたスクリーンに引っ張り出したもんだよ、蔡明亮。
苗天はここまで蔡明亮作品全てに出演した。
そして、苗天にとってこの作品が遺作となった。合掌。

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追記・その他

  (2017/07/15) 「FATHERS」に追記あり。 プーン役のAsda Panichkulは元MTVアジアの人気VJで東南アジアでは有名人。 ユク役のNat Sakdatornはタイのタレント発掘番組で優勝した実力派シンガーソングライター。

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