ヨコハマメリー

「ヨコハマメリー」
(2005)



ヨコハマメリー [DVD]ヨコハマメリー [DVD]
(2007/02/14)
永登元次郎、五大路子 他

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純白のドレスと白い化粧をして、横浜の街角に立つ老婆“ハマのメリーさん”。終戦直後から50年近く、背骨が曲がっても娼婦として生きてきた彼女の存在は、横浜で生まれ育った人ならば誰もが聞いたことのあるものだった。しかし、95年の冬にメリーさんは横浜から突然姿を消してしまう。彼女の存在がいつしか都市伝説と化していく中、メリーさんと深い交流のあったシャンソン歌手・永登元次郎さんは、彼女への思いを募らせていた。

平成18年度文化庁映画賞 文化記録映画部門 優秀賞受賞
平成18年度横浜文化賞文化・芸術奨励賞受賞



人類で最も古い職業、小説や映画にはしばしば登場するが、実際にはお目にかかる機会はなかなかない。
ハマで ”娼婦” 35年 「メリー伝説」 を追ったドキュメンタリー。
泣けました。
@飯田橋ギンレイホール


メリーさん自身は多くを語らなかったので、伝説だけが一人歩きする。
「実は山手のお屋敷に住んでいる」とか、「やんごとなき血筋」とか。
映画はメリーさんを知る人々の回想と、写真家・森日出夫の写真で綴られていく。
(この写真がどれも素晴しい)

メリーさんは娼婦でありながら、誇りと気品を持って生きた。
クローゼット代わりに場所を提供していたクリーニング店の夫婦は語る。

――ドレスはうちで預かり、その時々に着るものを
「第二イブニングを出して」 
などと言われて出していました。
一度だけ 「私のお父君が亡くなり、この世界に入りました」 と、身の上話をしてくれました。

(若い時のメリーさんのあだ名は「皇后陛下」!)

印象深いエピソードがある。
いつもメリーさんが練り白粉(資生堂の!)を買っていた化粧品店の女主人の話。

――ある日、メリーさんがいつもの松坂屋で、いつになくさみしそうだったので、
「メリーさん、お茶でもいかがですか」 と声をかけたら、じっと私を見て、
しっしっ、あっちへ行け、ってやられちゃった。
いつも店では機嫌よく買物してくれるのに。メリーさんって変な人ねえ。


メリーさんはなぜそうしたのだろう?気位の高い彼女ゆえ、人に施しを受けるのがいやだったんだろうか?

その話を妻から聞いた化粧品店主人の話。

――ばかだなあ、おまえは。
自分と同年配のおまえとお茶を飲んでいたら、周りの人からおまえも同業者だと
思われるんじゃないかと、メリーさんは考えたんだよ。


ことほどさように、メリーさんを見守るヨコハマの人々はみなあたたかい。
家のないメリーさんに、ビルの廊下や店先を提供していた宝飾店主人。
また、メリーさんがたまに紅茶を飲みに来た ”老舗” 喫茶室 は、他の客から、同じ食器を使うと病気が伝染る、という苦情が出た。
どうしたか?

「メリーさんは素敵な方だから、メリーさん専用にカップを用意しました。
これから、これでお出ししますね」

ヨコハマは、なんて懐が深いんだろう。
この作品はまた、メリーさんを支えた初老のシャンソン歌手 永登元次郎の物語でもある。
(この辺りの構成がよく出来ていると思う)

元次郎さんは、元ゲイボーイで、若い時川崎で 「街に立っていた」 ことがある。
戦後、苦労して女手一つで育ててくれた母の姿とも重なり、メリーさんを他人とは思えず経済的援助もしてきた。
そして今、元次郎さんは自身がんに冒されていた。

劇中、元次郎さんの歌が何度も流れる。
そんな元次郎さんの歌う 「MY WAY」 は、今まで聴いたどれよりも素晴しい。フランク・シナトラよりも。
しみじみ泣ける 「MY WAY」。
いつも、オヤジのカラオケでしか聞いたことがなかったから、「MY WAY」って、こんなにいい曲だったんだぁ、とはじめて気づいた。
この「MY WAY」の歌詞ほど、ここにぴったり来るものはない。

――私は生きてきて、いつか死ぬだろう。
ここまで私はなんとかやってきた。
いつも、「私のやり方」で・・・。

(歌詞うろ覚えです・・・)

そう、誰だって、それぞれの 「私のやり方」 で、やってきたんだ。そうだよなあ。
歌を聴きながら、己れの越し方をしみじみ振り返ったり。

映画の最後、がん治療で入院していた元次郎さんは退院し、どこか地方の老人ホームで慰問の為歌っている。
「MY WAY」を。
客席で聞いているのは、ヨコハマから忽然と姿を消したメリーさん(=素顔のままの)、かわいいおばあちゃんだった。
もうこのラストに、又、ぶわ~っと涙、涙・・・でした。

4月のロードショウ公開時から見たいと思いながら、つい行きそびれていた。
今回、ギンレイホールの最終日(得意のパターン!)、平日昼間の名画座なんて、たいして混んでいないだろうと思いきや、ほぼ満席の盛況!
(ちなみに併映は、「嫌われ松子」。これは既に観ているので、「メリー」一本見て帰った)。
観客はなぜかシニア世代の女性が多かった。

この後、この老人ホームで、メリーさんは息を引き取った。
そして、元次郎さんも亡くなったことをさっき知りました。
ご冥福を祈ります。

お嬢さんPageTopブラック・ダリア

Comment

私も見ました

私はDVDで見ました。
横浜は独特の文化がある街だと思います。それにしてもメリーさんを取り巻く人達の暖かいこと、そして上品なこと。
何をして生きてきたかも大切だけど、人とどう向き合って生きているかで人の品性がわかるものだと思いました。

■マリさん

コメントありがとうございます。
マリさんっていいHN(?)ですね。
渥美マリを思い出します。あ、流してください。誰もわかりませんね。

> 横浜は独特の文化がある街だと思います。
おっしゃる通り、横浜は伝統を大切にしながら、新しいものを取り入れるという
がんこで柔軟な土地柄がステキです。
私も横浜って大好きです。

>それにしてもメリーさんを取り巻く人達の暖かいこと、そして上品なこと。
ほんとね。街の人々の距離感も程良く絶妙でした。

> 何をして生きてきたかも大切だけど、人とどう向き合って生きているかで人の品性がわかるものだと思いました。
「品性」! このドキュメンタリのテーマはそれだったのかも知れませんね。
永登元次郎さんの生き方にも品性を感じました。

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ナンシー☆チロ

Author:ナンシー☆チロ
映画と本のつれづれ日記。
マイナー路線でごめんなさい。
サッカーも好き☆
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追記・その他

  (2017/07/15) 「FATHERS」に追記あり。 プーン役のAsda Panichkulは元MTVアジアの人気VJで東南アジアでは有名人。 ユク役のNat Sakdatornはタイのタレント発掘番組で優勝した実力派シンガーソングライター。

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