「最終目的地」
(2009/USA/THE CITY OF YOUR FINAL DESTINATION)
<眺めのいい部屋> <モーリス> のジェームズ・アイヴォリー監督作品。
今や、”世界の” ヒロユキ・サナダがアンソニー・ホプキンスとゲイのカップルを演じるということで、楽しみにしてました。
2009年 アメリカ映画です。
@シネマート新宿
家を出る少し前になんとな~くサイトをチェックしたら、なんと、タイムスケジュールが変わっているではないか!?
やべーやべー
シネマートは、時間帯によって複数の映画を上映しているので、日によって時間が変わることがあります。
みなさん、お気をつけになって。
南米ウルグアイの人里離れた邸宅に暮らす、自殺した作家の妻、愛人、作家の兄とそのパートナー。
そこへ亡き作家の伝記を書きたいとアメリカの青年がやって来る。
ジェームズ・アイヴォリー作品、久々に観たわ~
ああ、そうそう、アイヴォリーってこういうノリだったわね、っていう作品だった。
最後に観たのはなんだったかしら。
→ filmography を見たら、なんと、<日の名残り>(’93)以来だった! やべー
オマーは作家ユルス・グントの研究者として伝記の執筆を切望。
しかし遺族から公認を拒否される。
このままだと、研究の助成金は打ち切られ、大学の教職もなくなる。
”強い” 恋人ディアドラに押されて、ウルグアイに飛び直接交渉することに。
果たしてオーケーは得られるのか?というところが第一のポイント。
登場人物の人物造形がよく出来ているんだよね。
妻・キャロラインは、いわゆる ”キッツいヨメ” でいやな女なのよ。
彼女は伝記の執筆に断固反対している。
でも、愛人とその幼い娘と暮らすってつらいよね。
彼女も傷ついてるんだけど弱味は見せられないタイプ。
愛人・アーデンは優しい女なんだが、なんだか捉えどころがない。
作家の兄アダムは、パートナーのピートに生活全般を頼っている。
愛しているが故ピートに対して負い目を抱いている。
老い先短い自分から解放し、彼には新しい人生を送って欲しい。
その為に ”まとまった金” を持たせてやりたいとある計画が。
オマーの恋人ディアドラはデキる女。
不器用なオマーに対して、過保護・過干渉な母親のようになってしまう。
オマー自身は、なんだろう、これという自我もなく流れのままにここまで来たような。
原作はアメリカの現代作家ピーター・キャメロン。
ちょっとしたセリフでキャラクターの心情や性格を観客にわからせたり、脚本がよく出来ている
脚本は、おなじみアイヴォリー組 ノルマ・アレアンドロ・ジャヴヴァーラ。
(彼女については、
<眺めのいい部屋> 記事ご参照)
グント邸に滞在する内、オマーとアーデンは魅かれ合っていく。
しかしオマーには恋人ディアドラが・・・。
そしてアメリカに帰らなければならない。
ラブの行方はどうなる?
というのがまた次のポイント。

この作品の原題 : The City of Your Final Destination
その人にとって人生の最終目的地である街はどこなのか?
ここにはみな流れ着いて来ている。
もともとグントの両親はドイツから移住して来た。
アーデンはスペインでグントと出会い、ピートは ”トクノシマ” の出身。
キャロラインはモスクワに住んでいたようで、アダムとピートは英国で出会った。
オマーの出自はイスラム系だ。(豚肉が食べられない。酒も飲まない)
みなここでは異邦人なのだ。
ここに留まるべきなのか?ここが最終目的地なのか?
===
さてさて、問題の、アダム=アンソニー・ホプキンスとパートナーのピート=ヒロユキ・サナダ。
どんな風に描かれるのかしら?と思っていたけれど、なるほど、そうキタか!?
そうキタかって、どうキタんだよぉ 早く言えよぉ~
はいはい、結論から言うと、抑制が利いていい描き方だったわあ。
ピートを解放してやりたいというアダムの思いを知ったピートは憤る。
そんなこと望んでない!
40歳のピートは25年アダムと共にいる。
って、15歳の時から!?
その二人の歴史を思うだけでもう萌え萌えです


ヒロユキ・サナダは、アイヴォリーの前作 <上海の伯爵夫人>(2005)の撮影中に監督からオファーされていたという。
――アイヴォリー監督の作品ならどんな役でもやろうと思っていたが、
まさかアンソニー・ホプキンスのパートナー役とは。原作小説ではタイ人だった恋人はサナダのために書き換えられた。
――ゲイのしぐさなどを勉強してから撮影に臨んだら、監督に
「外見的にそれっぽくする必要はない」とくぎを刺された。
内面だけで愛情を超えたアンソニーとの関係を演じる難しいチャレンジだった。まさにヒロユキ・サナダのコメントそのまま!!
25年連れ添った二人の内面のラブラブ度が感じられて、見ていて幸せな気分になれるのよ~
サナダ、すっかりアイヴォリーに気に入られたわね。
そうなのよ、サナダってなんだかすっごくいろっぽい俳優なのよね。
印象的なシーンが。
朝ベッドでゼンラで横たわるピートの図がセクシーではあはあ。
となりのアダムはちゃんと服を着ているという対比がいっそういろっぽい空気があって、さすがにアイヴォリー!
このピートというキャラクター、実はとても重要な役どころで、全ての登場人物のジョイント的な役割を担っている。
グント家と直接的なつながりがないからだろう。ニュートラルな立ち位置。
ピートは器用な男で、仕事である家具のビジネス、邸での養蜂や畑仕事、馬も乗りこなし料理まで。
トクノシマ生まれのピートは、苦労人であるらしい。
そんな器用さが、むしろ「日本人」という設定にぴったり来る。→ 脚本でどの程度アジャストされたのか?
つーか、なんでもできちゃうピートにヒロユキ・サナダがぴったりだった。

===
いやな女・キャロライン役ローラ・リニーは、ぴったんこ。
ローラ・リニーってチロルのお気に入りの俳優とことごとく共演するやな女。
<ラブ・アクチュアリ> のロドリゴ・サントロとか! あとは、えーと、えーと、忘れちゃったけどとにかくやなのよ。(ロドリゴの恨みは深い・・・)
ローラはなにも悪いことしてなくってよ~ ごめ~ん
愛人アーデン:シャルロット・ゲンズブール。
なんともいえずチャーミングだわね。
大人の女性の少女性みたいな空気感は母・ジェーン・バーキンゆずりかしら。
こういう魅力ってアメリカの女優にはないわよね。
===
ここまで来ると当初の、"伝記の公認" などどうでもいい気がするのである。
そして最後にすべてが収束するところもすがすがしい。
やっぱりラブっていいわあ。
ジエームズ・アイヴォリーの美意識が感じられる一作。おススメ。
↓ 今年84歳のアイヴォリー爺、パートナー・イスマイル・マーチャント亡き後もがんばってますね。
となりのアダムはちゃんと服を着ているという対比がいっそういろっぽい空気があって、
ふたりはこんな関係を25年も続けているのだよね~~
私にとってもアイヴォリーもSANADAもほんとに久しぶりでした。
TBよろしく!!