ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~/アゲンスト8

[ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~/アゲンスト8]
(2014/The Case Against 8)


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【第23回 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(2014)上映作品】

今年の映画祭唯一のドキュメンタリ。
去年はドキュメンタリ3本見られたのに。
もっとやって!

*2016年1月30日より期間限定でロードショー公開
日本公開時のタイトルは、「ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~」
映画祭でのタイトルは「アゲンスト8」です。


カリフォルニア州では一度は合法とされた同性婚が、2008年11月に違法に戻された。
男女間の結婚のみ認めるものとする法案「プロポジション8」が通過した為である。
それが人権侵害であると訴え、再度同性婚を取り戻そうと二組の同性カップルが州を提訴。彼らはかつてない闘いに挑む。


2013年6月、同性婚をめぐる裁判が結審したニュースを見た時、やったねえ~~!と喜んだ。
しかしその裏にこんなドラマがあったとは・・・。

観る前は、”単に”裁判の裏側を追ったドキュメンタリ、と侮っていた。
チロル、一生の不覚。感動の一作でした。

とにかくへぇ~へぇ~の連続だった。
この戦いは二組のカップルありきではなく、まず平等な人権の為に戦う団体(=American Foundation for Equal Rights)が存在したこと。
この人権基金が裁判を闘う為に原告となる同性カップルを探したのだ。
身元・素行調査を徹底し、ベストなカップルが選ばれた。
このプロジェクトのリーダーは、映画監督ロブ・ライナー。

(↓ロブ・ライナーといえば)

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ウィル・ウィートン、リバー・フェニックス 他

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そして彼らの弁護を引き受けたのが、ブッシュ対ゴアの大統領選挙の際に、ブッシュ陣営の弁護士を務めたテッド・オルソン。
テッドにより引き入れられたのは、ゴア陣営にいたデヴィッド・ボイスだった。
かつて敵味方で闘った二人がタッグを組む。
二人のことはよく知らないけれど、見ているだけでどれだけキレ者かよくわかる。
彼らをサポートする優秀な若手弁護士チームも。

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見ていてこの人権基金は一体どれだけ原資があるのか?!と思った。
この手練れのじじい二人の弁護料だけでとんでもない金額になるはず。
ハリウッド、企業・・・ もんげー寄付が集まってるんだろう。
( この基金のサイト に行ったら、個人からも広く寄付を募っていました)

裁判にとっかかるところから、カメラは追って行くのだが、このドキュメンタリの勝因のひとつは、二組の同性カップルにフォーカスしたところ。
かんじのよい、”ふつーの”カップルに、観客は自然に心を添わせて行く(そういうカップルを人権基金が選んだわけだけど)。

歴史的裁判の原告となった彼らのプレッシャーはハンパなく、気持ちが高ぶって涙ぐむ場面も。
見ているこちらも共感して泣けてキタ。
相手側の反対質問に備えて想定問答の練習を行うのだが、とにかくどんな質問が来るかわからない。答えづらいプライベートな質問も予想される。

もし自分がうまく答えられなくて裁判に影響を与えたら・・・。
自分に多くの仲間の将来がかかっていると思うと・・・と使命感に声を詰まらせるポール・カタミ(ゲイカップルの一人)。

↓ 鏡の前にいるのがポール
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又、自宅には夜中まで中傷の電話がなりやまず、家族も否応なく巻き込まれる。
レズビアンのカップルは互いにバツイチで高校生の連れ子がそれぞれいて、その下に幼いふたごちゃんがいる。
こどもがいるカップル、という点も好感度高いよね。

スリリングな展開に観る側は引き込まれていく。
ひとつの裁判に勝利しても上告され、なかなか終わりが見えない。
裁判は4年続いた。

最終的な裁判が結審したシーンでは、結果がわかっているのにやっぱり感動・・・(涙)

負けた相手側は、担当判事が自分とパートナーが結婚したい為じゃないのかと難癖。
そう、担当判事はゲイだった。ゴイス!
それは事前にわかっていたことで、被告側も了承したはず。いちゃもん。

判事の主文によると、そもそもこの法案は「なんとか適格」(すいません、忘れた)を満たしていないというくだりが。
つまり、被告側(州)は同性婚によってなんらかの損害を受けているかどうか、ということで、実質的な被害・損害を受けていない者に(法案を提出したりする)資格はない、ということであります。
そもそもそこかい!?
誰かが同性婚することによってなんらかの損害を受けることを立証するって不可能だよね。

===
ドキュメンタリの中でいくつか印象に残るシーンがある。
同性婚禁止=結婚は男女間のもの とする「プロポジション8」のキャンペーンCM「子供たちを守るために投票を」を見た時のことをポール・カタミが語る。
――「子供たちを守る」と聞いて、私が想像する敵は、犯罪者や小児性愛者だ。
私はその種の人たちとは違う。


たしかにひどい話だよな。人権侵害も甚だしいよ。
同性婚をめぐる議論では、こどものことが必ず引き合いに出される。
同性カップルに育てられたこどもは、自分の家族をどう理解するのか。
こどもがかわいそうだ。いじめられる。
他のこどもたちにも悪影響を与える。

ほんとにそうだろうか
正しい家族というのはこういうもので、それ以外は正しくない。
そうこどもに教える方が悪影響じゃないの?
家族といってもいろんなかたちがあるよ。
みんなちがってみんないい。

最終の裁判は雪が降る季節だった。
歴史的な裁判を見届けようと傍聴券を求めて何日も前から長い列が出来た。
その中に重装備で座るおばあさんが。
え、おばあちゃんが?!さぶいのに大丈夫なの?

おばあちゃんは元軍人で、このままでは自分が死んだ後遺族年金がパートナーに渡らない、と。
まさに [フリーヘルド](2008年映画祭上映作品) はそういうドキュメンタリだった。

同性婚を考える時、結婚に対して今まで”あたりまえ”に思っていたことに気づかされる。
結婚には年金や相続・税金の控除など経済的問題、面会権など多くの問題が関わって来るが、もっとシンプルなもの: 愛する人と共に人生を歩んで行きたいという、個人の幸せの欲求・追及なのだと。

将来、いつかはわからないけれど、愛する人が出来たらその人と結婚して幸せになりたい。
たとえばティーンエイジャーが漠然と、一度は思うことではないかしら。
それが、あなたにはそんな権利はないですよ、と言われるって・・・。

このプロジェクトには、ダスティン・ランス・ブラック([ミルク]脚本家)も関わっていて、スピーチしていた。

――同性婚が認められることで、同性愛の若者に希望が与えられる。
もう自殺する若者が出ないように。


まるでハーヴェイ・ミルクが言っているみたいだった。
裁判所に入るダスティン・ランス・ブラックのとなりに、チーム・ミルクの一員、クリーヴ・ジョーンズの顔が見えたけど。

↓ ダスティンとロブ・ライナー
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===
共和党寄りのテッド・オルソンは最初、わざと負ける為に弁護を引き受けたんじゃないのか?などと非難された。
見ていてこの人すごいわ、と何度も思った。
法廷での語り口が秀逸なのよね。耳に心地よい低音ボイスで、間の取り方も絶妙。
聞いている人は、この人の言うことに間違いはない、と暗示にかかりそう。
オルソンとデヴィッド・ボイスが互いに尊敬し合い裁判に取り組む姿もいいのよね。

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共に闘ったクリス&サンディのカップルとオルソン


===
結審したと同時に同性婚が認められ、即発効するっていうところもアメリカらしい。
前に日本の元官僚の人が言っていたけれど、法律が変わっても日本だと各方面の手続きや何やらで年単位の期間がかかるそうな。現場にいる者からすると日本ではそれは仕方ないと。

市庁舎で結婚式を挙げるカップル。
結婚式ってなんで泣けるんだろう。

この結果により、同性婚を認める州が増えたが、一方で依然認めない州(この先認める可能性も難しい)もたしかにあると映画は最後に語るのだった。

湖の見知らぬ男PageTop52 チューズデイズ

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追記・その他

  (2017/07/15) 「FATHERS」に追記あり。 プーン役のAsda Panichkulは元MTVアジアの人気VJで東南アジアでは有名人。 ユク役のNat Sakdatornはタイのタレント発掘番組で優勝した実力派シンガーソングライター。

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